MENU

Wall street流、仕事の作法と激務の心得

f:id:Jooomgen:20200512075314j:plain


仕事以外に一つ、自分にとって大事なものを持ち、それを毎日、仕事とは別に継続し、自分の心の調子を維持すること。中長期的かつ持続的な成長をするには、これも本業におけるハードワークと同じくらい重要な事なのだろうと思う。がむしゃらに働く事だけが正しいと信じていた以前と変わり、最近はそう考えるようになった。

 

 

 


"Are You Destined to Deal?" With Goldman Sachs Managing Director Jim Donovan

 

 

 

本動画は米国の投資銀行Goldman SachsでManaging Directorを務めるJim Donovanが、バージニア大学ロースクールで語った30分程度の講話である。2017年にはトランプ大統領から財務長官に指名されており、典型的なWall Stree式エリートという人物である(なお、財務長官のポストは、家庭との時間を優先したい事を理由に辞退した。右記事参照。Hope Hicks new man is 53-year-old Goldman Sachs exec Jim Donovan | Daily Mail Online

 

この映像は、英語学習用の素材を探していた時に見つけた。知的かつ力強い語り口、迫力ある佇まい、英語の言い回しだけでなく語りの構造化や含めて大いに参考になる点が多い。今でも緊張感のあるアポイント前等に、自分のイメージを高める為に聴くこともある。

 

ここでDonovanが述べた「M&Aに関わる弁護士又はインベストメント・バンカーに必要な10の能力(6つのTangible Skillsと、4つのIntangible Skillsからなる)」は、業種・業界を問わず普遍的な心構えである、と思っている。

6 Tangible Skills
- Interpersonality:信頼を得よ
- Be facile with numbers:数字に強くなれ
- Have Interest in business:事業への関心を持て
- Be discreet:思慮深く慎重であれ
- Be Okay with conflict:対立・衝突に動じるな
- Put the client first:「顧客第一」を徹底し行動せよ

4 Intangible Skills
- Be an open book:素直であれ
- Have a system:自分の型を持ち、遵守せよ
- Take control:プロとして何を成すべきか伝えよ
- Have empathy:相手の立場で考えよ

 

一見するとごく平凡な項目だが、実際に内容を聞いてみればその要求水準の高さと熾烈さに驚く人も多いのではないか。

 

たとえば以下は、彼がTangible Skillの一つとして挙げる「顧客第一(クライアント・ファースト)」についての引用と拙訳である。

"Put the client first". A lot of people say that. What does that really mean? It means that you need to be there for the client whenever they need you. You need to respond to their emails immediately. You need to call them back immediately when they call you.
I want you want to really be responsive to the client. But two, you want to just as importantly, convey to the client that they are a priority. So you're going to get calls at 2:00, 3:00 4:00 in the morning. You got to return emails 2:00, 3:00, 4:00 in the morning. You got to return them really fast. You're going to spend all-nighters with the client. You're going to work very hard. You want to do, on top of that, whatever you can to make the client feel comfortable that they are a priority for you.

 

「顧客第一」と多くの人達が言うが、その意味するところは何だろうか。それは、クライアントが望んだ時、あなたは何時でもそこにいなければならないという事だ。メールが来れば即時に返事をし、電話があれば直ちに折り返す。

まずは素早く返事をする。そして、クライアントに対して彼らに対するプライオリティを示す。 深夜2時、3時、4時に電話を受ける事もあるが、それに対しても直ちに電話を折り返す。深夜2時、3時、4時にメールがあれば、速やかにメールを返す。クライアントと徹夜する事もある。非常にハードに働かなくてはならない。何よりクライアントに対し、あなたがプライオリティを置いていることに満足してもらうよう欲する事だ。

 

無形的サービスを扱い、競業ひしめく業界で、かつ高いフィーを請求する環境で働くならばそれを正当化できるだけの圧倒的な何かを常に提示する必要がある。そして特に、知識も経験も足りない若手のうちは、その埋合せが何らかの形で必要になるのは間違いない。

 

一方で、非常にIntensiveな働き方を続けていると燃え尽き症候群に近い症状に苦しめられる事も少なくない。何かを引き金とし、張詰めてきた緊張の糸が切れ気怠い感覚に取り憑かれると危険のサインで、回復には時間を要する。かくいう私もそう遠くない昔、2週間近くこの症状に苦しめられた。だからこそ、ハードワーク耐性と同じくらい、メンタル・コントロール重要なのだと痛感している

この点について、講義中、学生からの質問に対するDonovanのコメントは示唆に富む。似たような働き方をしている人にとって多いに参考になるのはないか(またしても拙訳となるがご容赦頂きたい)。

 

学生からの質問

"I was just wondering how you, I mean, you obvious said it's "very intense". How do you keep a balance with keeping it being very intense and you enjoying that, but also having time to release and relax without going crazy?"

「ディールに関わる仕事には、非常に張り詰めた緊張感がある」とあなたは言いました。どのようにして強い緊張感とのバランスを取り、またそれを楽しめるのでしょうか。気が狂う事がない様、くつろいだりすることもありますか。

 

JIM DONOVANの回答

Yeah, that's a good question. And I've got three of my four children here. So they have different perspectives on this for different reasons. But the short answer is for the first 10 years of my career, my oldest daughter is 16. She's sitting there. The first 10 years of my career, I had no balance. So Emily didn't see a lot of me from age one to six. And after that, I achieved balance by becoming senior enough at the firm and developing other interests and sort of partially transitioning out of the firm and doing things like teaching at UVA and other things.

But what I did during the first 10 years of my career, when I was really, really killing myself, pulling all-nighters, not coming home, all over the world.

 

良い質問だ。実は今日、私の4人の子供たちのうち3人がこの教室に来ている。彼らはそれぞれ、別の見方をするだろう。簡潔に答えると、最初の10年間にバランスはなかった。そこに座っている長女のエミリーは今16歳だが、彼女は1歳から6歳まで私の姿をあまり見たことはない。その後、私は十分にシニアな立場になり他の事柄にも関心を持ち、こうしてバージニア大学で教鞭を取ったりする等、部分的にファームとは別の場所での時間を持てる様になった。

但し、私のキャリアの最初の10年、私は自分を本当に自分を痛めつけたと言っていい。何度も徹夜をし家に戻らず、世界中を飛び回った。

  

I picked one thing that was really special to me. And I protected that one thing. And some of you who have been my students know this. But it can be anything. So you pick this one thing that's really special to you. For some people it's reading a book, right? And you protect that. You read that book for half an hour. And that's your release. And you don't ever give it up every day. Because if you give it up for one or two days, all of a sudden, it's three years later. And you haven't read anything. Right?

 

私はひとつだけ、自分にとって本当に特別なモノを選び、それだけは守り続けた。私の授業を取っていた生徒の何人かはこれを知っているだろう。一つだけ、自分にとって大切な何かを選ぶことだ。ある人にとってそれは読書かも知れない。それを守り続けなさい。30分、読書をする。それがあなたの安らぎになる。そして、それを毎日欠かさずに続ける事だ。なぜなら1日、2日と放置すれば気づけば3年が経っていることになる。そして、一冊も本を読めなかった、という事になってしまうだろう。

 

 

Pick the one thing, if it's cooking, cook for half an hour. If it's wine, don't drink for half an hour, but study wine for half an hour. Whatever it might be, do that and protect it
at the expense of anything else. Because you need that to do the job well. And you need that release.

 

それが料理なら30分、料理をする。もしそれがワインだったら飲むのは止めたほうが良いがいいが(笑)、30分ワインについて勉強する。何があってもそれだけは必ず守り続けるべきだ。なぜなら、それがいい仕事をする事につながるから。そうして安らぐ時間は必要だと思う。

 

 

For me, I had to do a run. I did a run every day. I ran every day for 35 minutes, same run every day no matter what. You know, wherever I was, I had a pair of sneakers and shorts and a t-shirt, sometimes a hat and gloves depending on where I was.
And I would just run outside. And for me, I protected that. It didn't matter what time of day. It didn't matter how sleepy I was, how little or no sleep I had gotten. I did that no matter what. And that kept me grounded. And it gave me the perspective. Now, some people would say that's not really balanced, right?

 

私にとってそれは、走る事だった。毎日35分、何があろうと走る事を続けた。どこにいてもランニングができるよう、スニーカーとパンツ、Tシャツを持っていた。場所によっては手袋と帽子を持っていく事もあった。どれだけ眠くても、どれだけ短い睡眠しかとれなくてもそれを続けた。それが自分を保つ事を助け、秩序をもたらした。それは、他の人からすれば、とてもバランスが取れていたとは言い難いかもしれないが。

 

That's the one thing I did. But that was the one thing I did. And then I achieved balance over time later. As my boys will tell you, I spent a decent amount of time, sometimes more time than they would like, with them. And I did that by just really working very hard at the beginning and building up enough of a reputation and enough confidence in my peers and being senior enough that I could do that.

 

それだけが、自分がやった事だった。バランスをとれるようになったのは何年も経ってようやくの話だ。それまでに相応の歳月を使い、キャリアの最初からひたすらハードに働き、十分な評判と自信を業界で獲得し、十分シニアになってからのことだった。

 

 

仕事に安定した給料以上のものを求めるならば、少なからずハードワークは必要だと思う。”当たり前の事を、人並みに”こなしているだけで、並外れた価値を生む事はできない。何も成し遂げていない時からワークライフバランスを望む事は、高望みも甚だしい。

 

但し、仕事以外に一つは、自分にとって大事なものを持つこと。それを毎日、仕事とは別に継続すること。中長期的に持続的な成長をする上で、これも激務と同じくらい重要な事なのだと、未熟ながらも色々と経てきた今は思う。自分にとってこうして文章を書く事も、そういう意味はあるかもしれない。

 

 

 

****

書籍紹介

 

『プロフェッショナル原論』(波頭亮)

 

『プロフェッショナルコンサルティング』(波頭亮、冨山和彦)

 『プロフェッショナル原論』を読めば、プロフェッショナルを名乗る事の意味が判る。 『プロフェッショナルコンサルティング』は波頭、冨山両氏の対談形式。仕事にはIQ(偏差値)は必要だが、それ以上に高い志を持ち、厳しい水準を妥協せず自分に課せるかが全てだと思っている。この2冊はそれを教えてくれた様に思う。