MENU

思考の型を持つ (4) - 論点と仮説

f:id:Jooomgen:20200607013600j:plain

はじめに|論点思考、仮説思考はなぜ重要なのか

論点思考と仮説思考は、問題解決の局面で徹底すべき方法論である。なぜそれが重要視されるかというと、それが有限な時間と限られた情報に基づき、敵(= 競合他社)に先んじて急所を撃つ、という戦略的思考の要諦であるからに他ならない。

 

 

論点思考とは何か

前回述べた様に、論点とは論理のピラミッドを構成する”Yes/No”の分岐を言う。問題解決の局面においては特に、上の階層、中でもに大論点に対する影響度が高いものを指して特に用いられる。

 

そして論点思考とは、

①真に解くべき問/課題(= 大論点)を設定し

②大論点を個別検証が可能な個別の論点に分解/網羅的に洗い出し

③個別の論点から、検証すべき調査・検討すべき重要論点を取捨選択し

④調査・検証のアプローチを設計する

という、一連の思考過程をいう。

 

洗い出した論点をのべつまくなしに調査・検討する事は、報告資料の見栄えを良くする事はあっても、「戦略的」に見て全くのナンセンスである。調査・検討すべき個別論点の取捨選択、注力の濃淡は上に述べた通り、大論点のYes/Noの解導出の為に徹頭徹尾、解決志向的になされるべきなのである。MECE(モレなくダブりなく)とよく言われるが、これはあくまで論点を洗い出す段階での網羅性を担保する為でしかない。

翻って、近年の日本企業、とりわけ上場大手企業は、役所的な官僚主義とサラリーマン的な無責任主義の合併症とでもいうべき有様であり、ともすればレポート作成に身をやつした挙げ句に事業成果は全く上がらず、悠長に幾月、幾年の歳月を費消しているケースも散見される。責任を取る覚悟がない日本企業が石橋を叩いている間に、トップダウンで果断な意思決定を行う中国/韓国企業との距離はいよいよ遠のくばかりである。

 

この辺りの課題感については、遥か以前に大前研一氏も『企業参謀』において、参謀たるもの完全主義を捨てよと述べている。

シェア競争においては、”完全な”市場戦略を立てても意味がない。シェア(市場占有率)の分母は己れと相手の売り上げを加えたものであるから、相手より寸分たりとも有効な戦略であれば、相手のシェアを抜くことができる。しかも、どんな優秀、完璧な戦略といえでも、流動する市場動向を逃しては効果がないから、タイミングが重要な因子となる。こうして、相手よりもほんの一枚上をゆく市場戦略を、タイミングよく実施することが勝利のカギである」という[戒2]が生まれる。

人間国宝が漆塗りをつくるときのように、一点の汚れも許容できない、という方針で臨めば、参謀の戦略立案には無限の人員と時間がかかるであろう。戦闘が始まり、わがほうが大敗しても、なお近くの丘の上で勝利の秘策を黙々と練っている完全主義者は、逆に何の役にも立たない無能者と呼ばれても抗弁できないだろう。

 

続く下記は、大前氏がKFS(成功のカギ)について述べた一節だが、この視点は論点の選別の際に役立つ視点であろう。

完全主義を捨てることのできた方々には、次に、再び完全かつ徹底した仕事をやるように勧めたい。物事には、その結果に影響を与える主要因というのが必ずいくつか存在する。これらをうまく管理あるいは応用すれば戦略が成功するというので、戦略的思考家の間ではKFS(Key Factors for Success = 成功のカギ)と呼んでいる。<略>

戦略的思考家とは、自らの担当する職務(役職、業種、業務)において、常にKFSが何であるかという認識を忘れない人のことであろう。そして、彼は全面戦争ではなく、KFSにに対する限定戦争に”徹底的に”挑むのである。

 

仮説思考とは何か

仮説、とは大論点或いは個別の論点に対する「仮の答え」である。

論点思考が帰納的/論理的思考とするならば、一方の仮説思考は演繹的/直観的思考と対置する事ができる。

仮説を立てる為に長々と時間を使ってはいけない。但し隠れた前提があり、普段から物事/情報を雑然と眺めるのではなく、分析的に眺める鍛錬を積んでいる必要はある。読書や人との会話等、様々な情報に触れている事も仮説に深み、広がりを与えるだろう。一方で知見や情報がない場合も、別の産業や過去の事例等を参照する等し、それが自分の思いつく範囲内という括弧付きであれ、”言い切る”姿勢を持つのが仮説思考である。

 

仮説は定義からしてあくまで仮の答えである為、その後の検証の過程での磨き上げ、或いは動的な軌道修正は発生する。当然、情報が殆ど手元にない段階で立てる仮説なら、精度の限界もある。

それでも仮説思考の重要性が説かれる理由は、仮の答えを常に持っておく事が思考の強度(仮の答えを常に即答できるか?)を担保し、意思決定が効率的、効果的になるからである

 

再び大前氏を引用させて頂く。

私はコンサルティングをしていて、新しい業種に入ったときには必ず「この業界で成功する秘訣は何ですか?」ということを、担当の専門家に聞くことにしている。もちろん即答できる人は稀だから、いろいろな角度から質問してこれを探り、できるだけ早くKFSについての”見込み”を立てる。これを普通「仮説(ハイポセシス)」と呼んでいるが、全く空をつかむようにして立てた仮説ならともかく、その道に詳しい人にいろいろ質問をしながら、仮説を立てていくと、意外に短期間で収束するものである。

こうして、たった仮説を立証または反証するためにやらなければならない”分析”もきわめて自明となる。企業参謀としてのコンサルタントは、新しい状況に遭遇することが多いし、また「その道のベテラン」が納得するような戦略を、短期間でつくらなくてはならない。こうしたときにひたすらKFSにを求めて仮説の立・反証をすることが、問題の核心に早く掘り進むためのきわめて有効な方法なのである。

 

戦略的思考とは何か。それは、役所的な官僚主義、サラリーマン的な無責任主義のいずれとも相反するものであり、ビジネス上の成果に向けられた徹頭徹尾、実践的な思考形態でなければならない。論点思考、仮説思考も当然、この枠組みの中で捉えられるべきものである。

 

 

Next Topic

jooomgen.hatenablog.com