問いを立てる

人の在り方は、問いを立てることで定まる。歴史の一頁に刻まれるような偉業に人を導いたのは、その固有の状況において彼らが定立した問の抽象度と質にある。

 

問いとは証明し、または解き明かそうとする対象である。問いを立てる、とは自らが証明し、解き明かそうとする対象を定めるということだ。極限まで結晶化すれば、問は「あれか、これか (“Enten – Eller”)」の二択として立ち現れる。

 

問を立てる力が及ぶ抽象度こそ、独立した思索家としての当人の器を示すものである。ここで抽象度とは階層としての高度を言っている。

偉業を成した人々の掲げた理念が獏とした後付の美辞麗句としか映らないなら、それは単に彼らが持つに至った問の抽象度が受け手の認識できる射程を超えているということである。

 

単に問いを立てるだけではなく、正しく問を立てるということが肝心である。問は具体の行動を方向付けるフレームである。したがって、そもそもの問が間違っていれば、答えが正しくなることはありえないのである。